古河昆虫調査会
通称コガコン
設立から既に1ヶ月ほどの歴史があり
県内の昆虫団体としては最古参の1つである
会費は取らず、ブログを会誌とするインターネット時代の新しめのなんかデジタルなアレである
会員は茨城の県西部を中心に2600名ほどを擁し、全国的にも屈指の昆虫団体となっている
ただし、会合がミクシーとかフェイスブックの出会い系チャットルームで行われているため、会長以下、会員同士はお互いを知らず、会員自身自分が入会していることをあまり知らない
そのため街中のオシャレな喫茶店で会長の私も知らないうちに会員同士の婚活合コンが開かれていたりする。
そんなコガコン
本日は茨城デビューの日
茨城県では各昆虫団体の領袖クラスが年に一度一同に会し、見栄の張り合いをする行事が開かれている
あそこでこんな虫捕まえちゃったぜ、いいだろー的な会合である。
複数の団体が乱立している茨城ならではの会合だ
もちろん私も参加
だって一応コガコンの会長だもん。絶対。
うふふ
お前がそんなとこ行くなと。
言いたい気持ちはわかりますが。
招待状来ちゃったんだもん。
断ったら失礼
大人の常識です
そんな訳で大切なコガコンのお披露目式を無事に終えまして
帰ろうとしますと
背後よりにじりよる人影
振り返ると小美玉の団体の会長さん
さあ一緒に採集へ行きましょうと
意味がわかりません。
私はコガコンのデビューを終えて後は一年昆虫の事を忘れて良い年を送るつもりでいたのです。
要するに
コガコンがいきなり他流試合を申し込まれた訳です
しかも相手は師範代とかそーゆーレベルを一気に超えて
最初っから道場主
おいおい、待てよと
待ってくれと
なんでいきなりボスキャラと当たらなあかんのだ
知ってんだぞと
あんたのとこに生きのいい若手何人かいるだろ
その辺から勝負させてくれ
とは言ってもこっちもコガコンの会長
あからさまに逃げるわけには参りませんし
人格や人間性でヒケを取っても虫屋として負けるわけにはいかないのです
なんとかそう言って会長同士の対決はダメと逃げきろうと思いましたが
その若手を連れてきたと押し切られてしまい。
何故か真冬の湿地帯で昆虫勝負が始まりました。
決戦会場にふらりと現れた暗い影を持つ一人の青年
そして偵察に現れた水戸昆虫同好会と茨城虫の会の面々
さらに昆虫調査ならついていくと博物館の先生までやってきて
またもや風雲急を告げる私の人生
応援を頼んだいつもの蛾類部隊は予定あるのー。とか。
鳥がみたいのー。とか言ってあっさり断られ
私の人望の無さを痛感しながら対決の幕が切って落とされる
落とされると同時に水戸昆とか茨昆の人たちが寒いから帰る―。と言いだしまして。
いったいぜんたいストーリー上なんの意味があったのか判らない存在に。
帰った瞬間私の頭の中に閃きが
引き分け狙いでいいんじゃね?
負けたらコガコン解散させられちゃうし
勝てる訳ないし
だったらなんとしても引き分け
何と言っても、おあつらえ向きの天候
気温5度以下
暴風
そうそうこの条件で虫が採れるとは思わない
採れなきゃ引き分け
そんな事を考えていると
青年は突然行方をくらまして
早速虫探しを始めている様子
私は小美玉の会長さんとお話して時間が過ぎる
小美玉の作戦はこうだ
若手青年が虫を探す
会長は私に話しかける
なんという簡単で攻撃力の高い作戦なのか
私はおしゃべりに夢中で虫探しができない
しかもだ
アカガネオサムシ探しているのにオノとか忘れた
そうは言っても元は渡良瀬昆虫調査官であった私
湿地性の昆虫ならお手のもの
素手で必死の朽木割り
途中経過を青年に確認すると
アオクビゴミムシとマイマイカブリ見つけたと
その時点で私は黒っぽい小さいゴモクみたいなゴミムシ一匹
同定なんか無理
焦って水際の朽木を探すが
泥地に両足がはまってしまい、絶体絶命のピンチ
必死で泥から抜けだし戦意喪失
あとはどんどん落ちる太陽の力によって小美玉軍が寒さに根を上げるのを待つ
いわゆる北風大作戦
しかし小美玉軍は一向に音をあげずにアオクビゴミムシの巣窟を見つけ出す始末
そろそろマズイと終了を宣言しまして
小美玉軍ゴミムシ多数
私よくわからないゴミムシ一匹
数では負けていますが
私が見つけたゴモクはひょっとしたら超大発見かも知れないと考え
湿地対決はひとまず引き分けとしました。
続いて小美玉の会長さんが森林対決を提案
もうまもなく日が暮れますので
こちらも引き分けになる可能性大
小美玉軍は勝ちに来たのに引き分けではシャレにならんと
無理やり延長戦に突入したい様子
何しろ当代きっての虫採りの天才と呼ばれている青年を引き連れてきてる訳ですから
実力からして私を叩きのめしたいのでしょう
ところがどっこい私も虫採り以前に天才
天候まで操って引き分け狙いしている訳ですから
北風はぴゅーぴゅーどこまでも吹いて行きます。
お天気の神様はいつだって私の味方
なら断る理由もないですし
場所を変えて森林対決
里山で虫を探します
私はとにかく寒いので
できるだけ動かず材起こしもせず
時間が過ぎるのをひたすら待つ
やがて試合終了のホイッスル
いくらなんでもこの寒さじゃ無理だろと思っていましたが
小美玉青年がホソミオツネンイトトンボを見つけたと言いだしまして
万策尽きそうな気配が漂い始めました
でも私には最終兵器があるのです。
みんなでホソミオツネンを見に行くと
青年が指差す先には木の枝が一本
どこにホソミオツネンがいるの?と聞くと
ここですと更に指をさす
その指の先にあったものは
木の枝
木の枝を見ながら小美玉会長は青年を天才だと褒め称え
博物館の先生も感動している様子
でも。木の枝。
なんでこの人たちは木の枝を見て大騒ぎしているのだろうと不思議に思いながら結果発表
小美玉軍 木の枝
私 何も見つけられず
木の枝だったら見つけてないも一緒じゃないかと思いまして
この勝負引き分け
そんな訳で当初の予定通り、古河と小美玉の対決は引き分けとなりまして
無事にコガコンの存続が決定
会長として最初の大仕事を終えました
わざわざ県西に遠征し私に勝負を挑むも引き分けで終わってしまい
肩を落として去っていく小美玉軍を見送りながら
これから次々コガコンに襲い来る茨城の刺客達を倒していかねばならないと
思いつきで降って湧いた宿命に決意新たに今から栃木の温泉に向かいます。
そしてこのブログはフィクションです。
小美玉の人たちは良い人たちでした。
またどこかでお会いしましたら宜しくお願いしますと、
普通のブログのようなコメントで締めくくらせて頂きます。