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スギタニゴマケンモン

道端で灯火していたらおじいさんが通りかかった

何してるのか聞かれて少しお話した

先週も灯火してたのバレてたみたい


山の中で灯火している白い幕がポツンとあったら人間はびっくりするのだろう


ここは僕が昔から好きな土地


昔はクワガタを探してやってきた


ここからもうちょっと北に行くと僕の大好きな土地が見えてくるんだけど


最近何もかもを失った


もう少し時が経って


僕が許せるようになったらまた行こうかな


僕まだ定点調査できるだけの力を蓄えていないから

誰かにこの先の北の大地を見てきてほしいんだけど


最後の最後の秘境にしておくのも面白いかもしれない
でも早く結果を知りたいとも思う

アンニュイな大地


僕はここでクロウメモドキを見つけたんだから
逢いたい子に出会えればあんまり場所に拘らない


蛾類の調査という側面で見てとても良くない事なんだけれども


良くない事なんだけれども

僕の中で際限なく生まれてくる好奇心と

助け出したい一心で

やっぱり今日もここにいる


虫の世界は文系の世界で

いや理系だという人もいるけれども
哲学的な観念を抱いた時点で文系だ

僕みたいな理系の人間からみると滑稽でもある事を必死で


ま、いいや

他人との関わりは極力避けていきたいのに

ホタルが飛ぶ夜空を見上げると急に一人が怖くなったりもする


それをこれから先も何年も続けていくのだろうか


僕の頭はいつか壊れてしまったりしないだろうか


小川のせせらぎを聞きながら

さっき別れたおじいさんが消えた方向へ僕も行く事にした


一か所にじっとしているなんて嫌だ


走り回りたい

走り回ってたくさんのものを見たい



灯火セットを片付けて

僕は街灯に向かった


昔と全然違う視点だから

昔見ていたものを見落としてしまったりもする


それは進化だと思っていたけれども

パラドックスな視点で見ないとダメなのかもしれない

答えはない


どの道昔と見ているものが違うのだから

それはそれでいいのかも知れないし


時計の針が一日を終わりを告げて

新しい一日が始まった事を教えてくれた


僕はオレンジ色の街灯に一人で立って

これからどれだけの夏を過ごせるのか心配になった


心配になって足元を見たら君がいた


僕はアスファルトの上でゴロゴロと転がって

ねぇねぇ今までずっと逢いたかったんだよと何度も話しかけて

どこにいたの?仲間もまだまだ沢山いるの?って問いかけた


もうさっきまで色々考えこんでいたのがバカみたいだ
ここにいたんだ

ずっと僕が探していたんだ

ここに答えがあったんだ

体中が熱くなって

ほんの少し涙が浮いてきて


あまりの嬉しさにゴロゴロゴロ

どこまでも僕が気が済むまで僕は回転するよ

仰向けになって地球がさかさまになっても君は君のままだ


三つの丸い紋がとっても綺麗で

すこしすれて白い地が出ているのを見て

たくさん冒険してきたんだねって微笑んだ


僕の大冒険は君で

出会えた事で終わったよ

もうしばらく休んで

ゆっくり過ごせる時間を作れるよ
もう街灯を見上げて首が痛くなったり

天気予報を見ながら忘れ物のチェックをしたりしなくていいんだ

もうここで街灯を見なくていいんだ


さっきから僕を迷惑そうに見ているけど気にならない

だって僕は嬉しいんだもの

スギタニゴマケンモン_c0200575_21373581.jpg



俺、ミツモンケンモンじゃなくてスギタニゴマケンモンだぜ




・・・え?



僕は立ち上がってズボンをパンパンとはたいて
セシウムを落としてまた次の街灯を見に行った
by JAPANFOREST | 2012-06-24 21:34 |


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